GPU入門

GPUの基本

GPU(Graphics Processing Unit)は、本来ゲームや映像の描画処理を高速に行うために開発されたプロセッサです。CPUが「順番に処理する」のに対し、GPUは「大量の小さな処理を同時に実行できる」という特徴があります。この並列処理能力によって、3D描画だけでなくAI学習・動画編集・シミュレーションなど幅広い用途で重要な役割を担うようになりました。

近年は生成AIの登場により、GPUは単なるPCパーツではなく“計算資源”として注目されています。特に画像生成モデルや大規模言語モデルは膨大な行列計算を行うため、GPUの性能が作業速度に直結します。またVRAM(GPU専用のメモリ)容量も重要で、AI用途では8GB以上が推奨されるケースもあります。

このようにGPUは、ゲーム用途から始まりながら、クリエイターや研究者、開発者にとって欠かせない存在へ進化しています。用途に合わせて性能や予算を選ぶことで、作業時間や制作体験が大きく変わります。

 

GPUとCPUの違い

CPU(Central Processing Unit)は、パソコンの頭脳として全体の処理を管理するプロセッサです。複雑な判断やOSの制御、アプリの処理などを少数の高性能コアで順番に実行するのが得意です。一方でGPU(Graphics Processing Unit)は、もともとゲームの映像処理のために作られたプロセッサで、数千もの小さな演算を同時に処理できる点が大きな特徴です。

このアーキテクチャの違いによって、CPUは「少数の重い処理」、GPUは「多数の軽い処理」に向いています。例えば文書作成やWebブラウジングはCPUが担当し、3Dゲームや動画編集、AI学習などはGPUが高速処理を行います。特にAIでは膨大な行列演算を扱うため、GPUの並列処理能力が大きな強みとなります。

まとめると、CPUは全体の制御や判断、GPUは大量演算の高速処理を担う存在であり、それぞれの役割が異なることで現代のコンピューター環境を支えています。

 

 

GPUの主な用途

GPU(Graphics Processing Unit)は、並列処理に特化したプロセッサであり、現代ではゲーム以外にもさまざまな領域で利用されています。ここでは代表的な用途を分野ごとに詳しく紹介します。

① ゲーム・3Dグラフィックス

GPUはもともと3Dゲームのリアルタイム描画を目的として発展しました。3Dモデル、テクスチャ、ライティング、影、エフェクトなど多くの処理を一度に実行する必要があるため、GPUの多数の演算ユニットが活躍します。特に近年はレイトレーシング対応や高リフレッシュレート表示などが普及し、ゲーム体験の質に直結しています。

② 動画編集・映像制作

動画編集ソフト(Premiere Pro、DaVinci Resolveなど)はGPUを利用してエンコード・エフェクト処理・カラーグレーディングを高速化します。4K/8Kなど高解像度の映像素材は膨大な処理量が必要なため、GPU支援により作業効率が大幅に向上します。特にDaVinci ResolveはGPU前提の設計で、性能差が明確に現れます。

③ 生成AI・ディープラーニング

AI分野ではGPUがほぼ必須です。ニューラルネットワークは行列演算の塊であり、数千〜数万の演算を同時に処理できるGPUが最も適しています。画像生成(Stable Diffusion)、大規模言語モデル(LLM)、音声合成(TTS)などの学習・推論の速度はGPU性能とVRAM容量によって大きく変わります。研究者・開発者がGPUを導入する理由はこのためです。

④ 科学技術計算・シミュレーション

GPUは分子動力学、気象予測、量子化学、流体シミュレーションなどの科学分野でも利用されています。従来はスーパーコンピュータ領域でしたが、GPUクラスタの普及により研究環境が身近になりました。NVIDIAのCUDAやOpenCLなどの技術がこの分野を支えています。

⑤ CAD・3DCG制作・レンダリング

建築、製造、映画VFXなどの分野では、3DCG制作やレンダリングにGPUを活用します。Unreal Engine、Unity、Blender、MayaなどのツールはGPU処理に対応しており、リアルタイムレンダリングやアニメーション制作に大きな効果を発揮します。建築や工業製品のモデリングでは、CAD表示の快適さもGPU性能に依存します。

⑥ 暗号通貨マイニング(縮小傾向)

一時期はGPUを使って暗号通貨を採掘する用途が急増し、GPU価格高騰の原因にもなりました。現在はPoS移行などで縮小しましたが、「並列計算で利益を生む」というGPUの性質は示された形です。

 

GPUの種類

GPU(Graphics Processing Unit)にはいくつかの分類があり、用途や性能、価格帯が大きく異なります。ここでは代表的な種類をわかりやすく解説します。

① 内蔵GPU(統合GPU / iGPU)

内蔵GPUはCPUに統合されているタイプで、Intelの「UHD」「Iris Xe」、AMDの「Radeon Graphics」などが代表例です。省電力で価格も安く、日常的なブラウジング、動画視聴、一般的なオフィス作業には十分対応します。ただし3DゲームやAI推論など重い処理には向きません。ノートPCやビジネス向けPCに多く採用されています。

② 外付けGPU(専用GPU / dGPU)

外付けGPUはグラフィックカードとして基板上に搭載された単体GPUで、NVIDIA GeForceやAMD Radeonが代表です。3Dゲーム、動画編集、3DCG制作、AI用途など幅広い処理を高速に行えます。デスクトップ向けは性能と冷却に余裕があり、ノート向けは省電力設計の“モバイル版”が搭載されています。

③ プロフェッショナル向けGPU

CAD、映像制作、CGレンダリング、AI研究といった専門用途向けの高信頼GPUです。NVIDIAでは「RTX Aシリーズ」「Quadro系」「Tesla/A100/H100」、AMDでは「Radeon PRO」「Instinctシリーズ」が該当します。ドライバの安定性や長期間のサポートが重視され、ワークステーションやサーバーで利用されます。

④ eGPU(外付けGPUボックス)

eGPUはThunderboltなどでノートPCに外付けする方式です。普段は軽量ノートとして使い、必要な時だけGPU性能を追加できるため、クリエイターや研究用途で注目されています。ただし接続帯域の制限があるため、デスクトップ比では性能が低下する点に注意が必要です。

 

 

主なGPUメーカー

GPU(Graphics Processing Unit)はさまざまなメーカーから提供されていますが、実際に市場を動かしている主要メーカーは限られています。ここでは代表的なGPUメーカーを紹介し、それぞれの特徴や強みをまとめます。

① NVIDIA(エヌビディア)

NVIDIAはゲーム用からAI用まで幅広いGPUを提供する最大手メーカーです。一般向けには「GeForce」シリーズ、映像制作やCAD向けには「RTX Aシリーズ」、AI・HPC向けには「A100」「H100」「L40」などのデータセンター向けGPUを展開しています。特にAI研究・生成AI分野ではCUDAやTensorRTといった強力なソフトウェアエコシステムを持ち、市場シェアも圧倒的です。

② AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)

AMDは「Radeon」シリーズで知られるGPUメーカーで、CPUの「Ryzen」と組み合わせられる統合GPU(iGPU)も強みです。ゲーム用途のほか、ワークステーション向けには「Radeon PRO」、サーバー向けには「Instinct」シリーズを展開しています。価格性能比に優れ、クリエイターやゲーマーからの支持も厚いメーカーです。

③ Intel(インテル)

Intelは長年CPUメーカーとして有名ですが、近年は独自GPU「Arc」シリーズで専用GPU市場に参入しています。また「Iris Xe」などの統合GPUはノートPCを中心に広く採用されており、省電力性能に優れます。専用GPUではまだ参入初期段階ながら、ソフトウェア最適化による伸びしろが期待されています。

④ Apple(アップル)【特殊枠】

AppleはM1/M2/M3チップに独自GPUを統合しており、動画編集や3D用途に対応する高いパフォーマンスを持っています。汎用GPU市場(PCIeカードなど)に参入しているわけではありませんが、Mac環境のGPUとして重要な存在です。

GPU市場は今後もAI需要を背景に急成長が予想されており、各メーカーの戦略にも注目が集まっています。自分の用途に合わせてメーカーを選ぶことで、より最適な環境を構築することができます。

 

 

GPUの価格変動、、いつ買うべきか?

GPU(グラフィックスカード)はPCパーツの中でも特に価格変動が激しい製品です。為替レート、競争状況、技術進化、需要の波など複数の要因が絡むため、「欲しいときに常に安い」とは限りません。ここではGPU価格の変動要因と、賢い購入タイミングについて解説します。

GPUの価格が変動する主な理由

GPU価格は以下のような要因で上がったり下がったりします。

① 新世代アーキテクチャの登場
NVIDIAやAMDが新シリーズを発表すると、旧世代が値下がりする傾向があります。例として、RTX 40シリーズ登場時にはRTX 30シリーズの価格が調整されました。

② 半導体需給の影響
コロナ禍や輸送遅延、工場の生産能力不足などが続くと、供給が不足し価格が上昇します。半導体は生産に時間がかかるため、需給不均衡が起きやすい分野です。

③ 為替レートと輸入コスト
GPUは海外メーカー製が多く、円安になると価格が上がり、円高では下がりやすくなります。

④ ゲーム・AI・マイニング需要
AIブームや特定タイトルの人気、暗号通貨の価格上昇などが重なると、一時的に需要が増えて在庫が不足するケースがあります。

いつ買うべきか?の判断基準

購入時期に迷ったときは、次のタイミングを意識すると失敗しづらいです。

✔ 新シリーズ発表後の数ヶ月
発表〜発売後3ヶ月程度は旧世代の価格が落ちやすいです。

✔ 年度末やセール時期
ブラックフライデー、年末年始、決算月(3月)は値引きが期待できます。

✔ 為替が安定している時期
特に輸入代理店モデルの場合、為替の影響が大きいため円安ピーク時の購入は避けたいところです。

 

 

GPUクラウド

GPUクラウドとは、NVIDIAなどの高性能GPUを、ネットワーク経由で利用できるクラウドサービスのことです。通常、GPUを搭載したワークステーションは購入コストが高く、運用にも電力や冷却、メンテナンスが必要です。GPUクラウドを使えば、これらを自分で準備することなく、必要な時間や用途に応じてオンデマンドで利用できます。
GPUクラウドの仕組み
GPUクラウドは、データセンター内のGPUサーバーを仮想化やコンテナで利用者に割り当てる方式が一般的です。ユーザーはリモート接続でGPUリソースを利用し、AIモデルの学習、映像処理、3DCGレンダリングなどを実行できます。AWSやGCP、Azure、Paperspace、RunPodなどサービスごとに料金体系やGPUの種類が異なるため、用途に合わせた選定が重要です。
GPUクラウドが使われる分野
GPUクラウドは以下のような分野で活用されています:
•生成AI(Stable Diffusion / LLM)
画像生成や大規模言語モデルの学習・推論に利用されます。
•機械学習・ディープラーニング研究
行列演算が多いニューラルネットワークに最適です。
•動画編集・映像制作
4K・8Kエンコード、カラーグレーディング、VFXでGPUが高速動作します。
•3DCG・CADレンダリング
Blender、Maya、Unreal Engineなどで性能を発揮します。
•科学技術計算・シミュレーション
分子動力学、流体解析、気象モデルなどでもGPU計算が活用されています。
GPUクラウドのメリット
•高価なGPUを購入せずに使える
•必要な時間だけ課金で経済的(時間課金/秒課金等)
•複数GPU構成を簡単に用意できる
•拡張性とスケーラビリティが高い
•研究や検証の初期導入に向いている
注意点とデメリット
•長期連続利用では購入より割高になる場合がある
•ネットワーク帯域に依存する
•GPUの種類やVRAM容量で料金差が大きい
まとめ
GPUクラウドはAI研究や映像制作など、多様な分野で欠かせないインフラになりつつあります。購入より小さな初期コストでハイスペック環境を構築できるため、個人クリエイターから企業まで幅広く活用されています。
ただのPCパーツであったGPUが今となっては多くの分野で欠かせない要素になってきました。さらに詳しいGPU情報を知りたい場合、以下にご紹介する書籍で勉強してみるのもよいと思います。

 

 

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(こんな方におすすめ)
・GPUの技術動向に関心のあるソフトウェアエンジニア、モバイルアプリ開発者、学生の方々

(目次)
第1章 [入門]プロセッサとGPU
1.1 コンピュータシステムと画像表示の基礎 ……フレームバッファ、VRAM、ディスプレイインターフェース
1.2 3Dグラフィックスの歴史 ……文字から図、2D、3Dへ。高品質とリアルタイム
1.3 3Dモデルの作成 ……パネル、座標、配置、光
1.4 CPUとGPUの違い ……プロセッサも適材適所
1.5 ユーザーの身近にあるGPUのバリエーション ……SoC、CPUチップ内蔵、ディスクリートGPU
1.6 GPUとおもな処理方式 ……メモリ空間、描画時のGPUメモリ確保方式、並列処理

 

 

 

 

 

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